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自画自計

散文歌


本音
寂しさの訳は 分かっている 涙のしまい方が 分からなくて 抱かれるように 抱きしめたい 僕をだまさず 心だけをだますように 抱きしめるように 抱かれてほしい 隠し事を隠すように 部屋の灯りを閉じて 夜の次は朝だって 分かっている 夜の越え方が 分からなくて 抱かれるように 抱きしめたい 好きの言葉なら いつでも使えるけど 抱きしめるように 抱かれてほしい 君の口づけで 本音を隠してほしい 罪の温もりなのか 優しさの温度なのか 僕も君も 抱かれるように 抱きしめて 抱きしめるように 抱かれてほしい
yuji
13 時間前


感情戦略
深海の様な 深い朝に 加湿器の 息づかいが鳴る スイッチを切って ここからは 僕が呼吸を 引き受けていく 時々勝って 大体負けて 苦しみながら 笑ってきた 僕だけがそうなのか それが僕なのか みんなもそうなのか それが幸せなのか 夜が真夜中に 溶けていく 麻酔が切れて 痛みだす感情 戦術を失った 感情戦略 逃げ場のない ベッドの上 君がいないと 答えを探してしまう 君がいると 答えが必要なくなる 僕だけがそうなのか それが僕なのか 君もそうなのか それが愛なのか
yuji
5 日前


心屋
少し冷たい風が寂しさの色を見せて 抱きしめる事の意味を知らせてくる 何となく――そう、何となく本屋へ向かう 海を見つめることが許されるみたいに 言葉に触れることが許される場所 僕には心が丁寧に並んでいる様に見えるんだ だから本屋なんて言わずに 心屋って 名乗り出てもらえると助かるんだけど ミステリー ファンタジー 恋愛 歴史 ジャンルじゃなくて、心別に並べてもらいたい 喜び 驚き 優しさ そして悲しみ 寂しさに触れたくなった時に すぐに見つかるように ――こんなことがあってね 別れを告げられました 優しい 優しい別れを あんまりに優しい別れだったから より愛さずにはいられなくて おかしな話でしょ 僕の自由と不自由を 奪われるぐらい 愛し過ぎずに愛するなんて できなくて 愛と恋との違いも 分からずに 君に好きだと告げていました 君の言葉をふと思い出す 「私のどこが好きなの?」 どこだろう 好きに「どこ」なんてあるのだろうか 結局、「全て」と答えてしまった 答えが解らない時の 答えの様な気がする この悲しみが この痛みが 君だと思えて 悲しみを和
yuji
12月5日


シナリオ
西暦はめくられた 歴史は警戒している 僕らは星の数をどこまで 数え終えたのか この星を地球と呼んだ 本当の名は 無邪気が過ぎた僕らは そろそろ叱られそうで 科学を武器にして この星を暴きにかかる 君の気持ちひとつも 解けやしないのに 非常口の灯りしか 役に立たない未来に 寂しさのシナリオが この街を演じている 君は片手でセリフをめくって 退屈を終わらせに来る 台本を横にのけて 僕の瞳をずっと見ている 君はアドリブという名の愛を 世界と歴史を黙らせて じっと待っている
yuji
11月28日


隠し事
僕の事は 僕がやる 傷口に 夢でも塗りながら 希望ってなんだ 希望よ 切り札も無い 手札ばかりで 一歩踏み出す 感触はどう 絶妙なフライング 悪くない そして二歩 そして三歩 君に背中を押されたい 知らぬ素振りで 孤独の事 それは君の事 君の声を感じるから 君の事 隠し事 これも君の事 隠せば隠すほど 僕の事 「君なしじゃ生きられない」 なんて言えなくて せめて 「君なしじゃ生きたくない」 そう言わせて
yuji
11月22日


新・呼吸
苦しみを少し抜けて 病み上がりの足取りが 僕の視界を拾う 前に進むことを許された顔で 僕は言葉を選び始める 僕が僕を許せずとも この街が僕を認めている 君との別れを受け入れた時の様に 僕にあらがい 街にあらがえず 小さな僕を知る 詩など書きたくもない そんな気分で 詩を書いている今 まるで感想文のような手紙で 論文の様な契約書で 苦さが口いっぱいに広がり鼻を刺す 夜が来ると知っている だから今日を始められる 愛があると信じている だから恋を始めてしまう これだけが今の僕
yuji
11月14日
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